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seed × chisaki  2nd collaboration
-ブンタールハット-

昨年スタートしたseed。そのコラボレーション第一弾は、chisakiのブンタールハットでした。平井かずみが惚れ込んだ、ブンタールという素材の美しさと、chisakiならではの、エレガントなのにどこかほっとする優しさをもつかたち。

一年を経て、夏を前に再びchisakiのハットコレクションをseedに迎えたいと、chisakiデザイナーの苣木紀子さんにお声がけしました。

 

今回も、ブンタールが一つの軸になります。今年のブンタールは、中折れのマニッシュなかたち。マニッシュだけれど、どこか柔らかさがあるのがchisaki流です。

もう1つは、ブレード(組み紐)を組み上げて生まれた、シックで透け感の美しいブレードハット。広めのブリム(つば)のかたちを、気分に合わせて折り返したりそのままシンプルに活かしたり。いく通りにも楽しみ方が見つかります。

 

まずは、ブンタールハットのディテールを。seedは、デザイナーの苣木さんが何年も前につくり使い続けているブンタールの中折れ帽をリクエストしました。当時の型を作ってくださった職人さんはもう引退されて同じ木型はないため、似ている木型で型入れをして、最後に手作業でかたちを調整しています。

 

ブンタールの貴重さ、美しさは、昨年の記事に詳しく書いています。

フィリピン原産の植物から時間をかけて丁寧に繊維を取り出し、中国に移送して丁寧に組み上げてつくられるボウタイ(帽子の原型)。編みの担い手がもう途絶えてしまい、このクオリティの新しいブンタールハットは今のところ、もうつくれないのです。今は、残されたボウタイを大事に使っていくしかない、という現実があります。

 

今回のブンタールハットにも、chisakiの仕掛けが随所に詰まっています。

まずはクラウンの高さ。少し高めにすることで、少しエレガントなバランスになります。

ブリム(つば)の長さも、前と後ろでは1cmの差があります。前のほうが少し長いので、目元が少し隠れて、横から見た姿も美しく映えます。

このかたちが大事なところなので、型崩れのないよう、つば先には、細い樹脂のワイヤーを通して、固さは出さずにかたちをキープする工夫を入れています。

そして、フォルムのやわらかさ。木型に入れたあと、手で前後のかたちにやや変化をつけています。こうすると、マニッシュながら、かっちりした印象を遠ざけて、やわらかな揺らぎのある佇まいが生まれます。

 

chisakiのハットは、エレガントなのに、どこか朗らかで風の抜ける印象があります。それは、仕上げに至る工程の中で、細部を見たり引いて見たりしながら、理論には収まらない手作業を少しずつ加えていくから。全体のバランスも見つめながら、醸し出す雰囲気を大事にしています。

今回合わせたリボンは、グレーの細いベロアリボン。ベロアは、淡い色彩の洋服には馴染みながらもひらりと艶を放ち、ダークトーンの服には静かに光る線を添えてくれます。

こうしたかすかなスウィートバランスの積み重ねが、中折れ帽のマニッシュなスタイルでも、パンツスタイルにも、ワンピースやロングスカートにも合わせやすい秘密です。

 

seed styling

ブンタールハットは、上品な艶と美しいかたちがあります。だからこそ、大人のカジュアルをしっかりと楽しむのにぴったり。ショートパンツに白シャツ!という元気一杯のコーディネートも、ヴィンテージの美しいシャツと、かわいすぎない、だけどかわいい、の間にあるプリントを選べば、大人が楽しむ夏そのものに。

また、よりシックな美しさを選ぶなら、夏のブラックを。薄い透け感のある生地を重ねると、夏でも涼しげに風の抜けるスタイルになります。今回は、泥染めを重ねて、真っ黒というよりも少しニュアンスのあるブラックを選びました。

リボンは取り外しできるから、外してしまって、ぐるり別のリボンを回したり、そのリボンに好きなブローチを合わせたりしても、可愛いのですよ。

カジュアルだしシック、シックだし抜けがある。皆さんも、帽子との組み合わせは、より自由に、ご自身の好きなものを少しずつ足して身につけてしまおう!というぐらいのムードで、楽しんでくださいね。

 

 

seed × chisaki  2nd collaboration

-ブレード ハット-

さて、次はブレード ハットです。

デザイナーの苣木さんが「私は、この素材の透け感の美しさ、そして光を感じた時にきらきらと小さな輝きが現れるところが好き」と言う素材。ベージュはラミーの繊維、ダークブラウンはアバカの繊維を使用しています。

ベージュに使用した天然繊維のラミーは、美しい光沢のあるしなやかな素材。吸湿速乾にも優れ丈夫で、肌にはりつかない清涼感のある素材は、服地としても大変な人気です。日本では苧麻(からむし や ちょま)と呼ばれ、伝統工芸の織物上布としても古くから好まれてきました。

ダークブラウンに使用したアバカは、フィリピン産で「マニラ麻」とも呼ばれますが、実際には麻ではなくバナナのような高さ3-5mにもなる樹木の繊維。コシがありしなやかで、重量は麻の半分以下と非常に軽いのが特徴だそう。日本では糸芭蕉と呼ばれ、琉球の織工芸「芭蕉布」にも使われています。

今回は、この上品な繊維とポリエステルを合わせて組んだブレード(組み紐)を使い、より丈夫でしなやかな、かつ復元性に優れた素材となりました。くるくると円錐状にミシンで縫いあげて帽子のかたちができていきます。

このかたちは、chisakiがつくり続けて数シーズンを数える定番型をベースにしています。帽子のクラウンが浅いので、帽子のブリム(つば)が視界を遮ることなく、視野を広く保てます。それに、サイズのフィット感を限定せず、どんな方でもかぶりやすいのもよいところ。

 

seedではブリムのかたちを自在に変えられるように、ふちに樹脂のワイヤーを入れています。そのまま身につけても、少しふちを上げても、後ろだけ、あるいは前だけ持ち上げてもよい。その時々のかたちをお楽しみいただけます。

 

seed styling

ブリム(つば)をそのままに着用すると、浅いクラウンとストレートなブリムがクラシックでエレガント。襟の大きなピンクのインドシルクのブラウスとゆったりしたサルエルパンツのリラックススタイルも、ヒールを合わせればさらにムードが生まれて、心の旅に出られそう。

同じブラウンでも、後ろを少し上げてかぶって、ラフな洗いざらしのブラウスと健やかなパンツやスカートを合わせると、ぐっとカジュアルに、いつものムードで日を浴びながら歩き出せます。

さらにふちを全て上げてみましょう。より躍動感が出て、デニムに透け感のあるブラウスといったマニッシュエレガンスを軽やかに仕上げてくれます。リボンを後ろ手に結ぶのもおすすめ。後ろ姿をぐっと印象的にしてくれます。

ナチュラルカラーのブリム裏に、くっきりとコントラストをつけるブラックのライン。後ろを少し上げたり、全てくるりと上げると、よりコントラストがついてアクセントになります。

リボンも、このオレンジのようなブラウンがよいコーディネートのアクセントになりますね。

女性らしさ全開のロングスカートやフリルと合わせても、甘くなりすぎず、朗らかに響きます。

 

Photo: Michi Murakami

Text / Styling: Yuko Mori